「少子化とWLBはどう関係しているのか」
育児休業法、エンゼルプラン、次世代育成支援対策推進法そして少子化社会対策基本法と1990年の出生率1.57ショックからその対策が続々と打ち出されている。 しかし、その効果をいまだ見るにいたっていない。 基調講演「少子化時代の企業の在り方」をされた武石恵美子氏 (ニッセイ基礎研究所上席主任研究員)は、その理由に
働く女性のための施策の位置づけだった
WLB(ワーク・アンド・ライフ・バランス)の導入はコスト高と企業が考えた
働き方自体の見直しが行われず子育て支援策のみに集中した
と指摘している。
出産後の就業継続状況は、企業規模が大きくなるほど低下してくる。10人未満では 39.4%もあるのに、1000人以上規模では13.7%に低下する。 突出している公官庁では50.4%に及んで、大企業に働く女性ほど出産後退社する傾向が顕著に なっている(平成12年、国立社会保障人口問題研究所調査)。
公務員の身分保障とともに、職業意識の高さに女性間の違いを見ることができないだろうか。 行政職でも教育職にしても、出産後の職業継続は自然として行われている。職場の中で民間企業にはない、 女性が出産後も継続できる何かがあると思われる。武石氏があげられた3点について考えてみたい。 第1は、確かに女性のための施策だが、これによって男性も女性とともにWLB意識を 高めている。職場内でもその意識は高まっているが、公官庁までには至っていないのが実情の ように思える。第2は、企業側の責任としている。これは、第3と深く関わる課題でもある。 女性の働き方意識が公務員と比べてその違いがあるのだろうか。職場内での出産育児への意識に 違いはないのだろうか。支援策とともに強制力を高める政策へ一歩踏み込む時期ではないだろうか。
少子化解決には、出生率の改善とともに未婚率低下の改善である。日本では、婚外子が少ないため もっぱら未婚率の上昇は深刻である。その原因には、女性が男性に抱く意識の中で、家計を支えるのは 男性の責任とすることが指摘されている (東京学芸大山田昌弘氏) 。改善策は、女性も家計を男性とともに 支える意識に転換させ、女性が働きやすい条件を整備することが急務としている。意識改革がスピードを もって行われる強化策こそが必要となっている時期が間近であるように思われる。
(群馬県主催「仕事と家庭の両立セミナー」11月25日太田市にてパネルディスカッション)
「元気は、旧制渋川中学に在り」
元電通社長 木暮剛平氏
大正13年生まれ(81歳)と思わせない元気なご講演。その元気の秘訣について会場から質問が出された。 そのお尋ねに「赤城村出身で、旧制渋川中学へ徒歩で通学したことや、渋川中学校では全学挙げての庭球大会が行われるようにテニスが盛んだったたことから、テニスも盛んにやってきた。」 「60を過ぎてからは、俳句をするようになり、大いに楽しんでいる。」と、輝くような笑顔を絶やさない。
さて、これからの社会の想定は長期的にも経営を左右することになる。 「20世紀は戦争の世紀、21世紀は人間の世紀。」として「すべてが資本主義グローバリゼーションであり、地球規模化する。」としている。 「私が参加した世界広告会議のディスカッションでは、4Eをキーワードとしている。Economy(経済),Ecology(環境),Ethnic(民族),Education(教育)をあげている。」
環境については、唯一規制が求められるものとしてツバル(トゥヴァル)国を例に警告している。 この国は南太平洋ギルバート諸島南東のある旧エリス諸島。英国連邦から1978年独立。人口一万人。 地球温暖化により海面上昇にともなって、島がなくなっていくという自滅をむかえ国家を解散する事態となっている衝撃的な事例。
民族問題では、ハーバード大学のサミュエル・ハンチントンの「文明の衝突」を引用し、民族対立とともに宗教対立が顕著化しその終焉なき対立軸を指摘する。 日本の経済大国化は、軍事小国化がもたらし堺屋太一氏の二つの維新後に迎える官から民の時代への第3の維新を引用し国際化、情報化そして社会成熟化を迎えている。
こうした中での経営者は、シュンペーターの企業家の革命的行動を創造的破壊者として「全員経営」こそが必要とされている。 御手洗キャノン社長の全員経営はじめとする日本的経営をすすめる。荻生徂徠はじめ日本チャンピョンのロッテ監督バレンタインの全員野球へとつぎつぎに登場するベストプラクティスすべてがタイムリーであり説得力を持っている。
私の父であり創業者の山田賢も旧制渋川中学出身の大正11年生まれ。 木暮氏とは二歳違いである。父もまたテニス好きであった理由がはじめて解かった貴重な一日となった。
群馬経営者協会主催のセミナー「これからの社会、これからの経営」より
(11月1日前橋市にて)
「いま、若者に何が起こっているか」
放送大学教養学部教授 社会学者 宮本みち子氏の講演から
7月1日、日本商工会議所で宮本氏は、ヨーヨー型移行・ジグザグ移行が現象となって「一度つまずいたらやり直しがむずかしい」としている。ヨーヨー型とは、1・2年無業化したあと再就職しその後再び再失業することと定義している。 「何をしたらいいのかわからない」という悩みをもつ若者たち。こうした現象は、まさに長期雇用から即戦力雇用への移行や大量一括採用から中途からの通年採用の変化から来ている。 学校では、従来からの大量一括採用での「割り振り就職」ができなくなったことから、本人が「やりたいこと」「どういう働き方か」「どういう人生にするのか」など自律型へと転換した。 若者たちの戸惑いと迷いが連続的に発生している。時を同じく教育現場の崩壊もはじまっていた。 日本社会には、フリーター(270万人)やニート(52万人これに家事手伝を加えると85万人)無業者を救済するシステムがない。
ポスト工業化は、知識労働者創出が必要となり英国では高学歴化も進んだが低学歴者も増加している。日本では、高校を過ぎても親の責任は続き、22歳を過ぎてもさらに継続していく。親の責任がどんどん重くなっていく。 さらに宮本氏は、90年代にはすでに2000年に若者問題は表面化し政策も始動していたはずなのに、「職業意識」「働く意欲」が教育現場では対応できずにいた。今日の時代に通用する教育が検討されずにいたことを厳しく指摘している。同時に、産業界からも目立った要望はなく問題解決への政策実現が先送りとなったことを付け加えた。
いまや、学者もその現象を指摘しマスコミがそれを強調し不安感を助長する。 バブル崩壊後には、「女子学生の氷河期」としたマスコミは最近の女子学生の就職率の改善について報道しない。 産業界からの指摘がなかったとしているが、バブル期以前から慢性的な労働力不足の解消に向けて必死の求人活動に対して、学校進路担当者の高慢な姿勢には多くの経営者・人事担当者が一抹の懸念を抱いたことだろう。長く続きすぎた「割り振り就職」方式は、なにをもたらしたのか。 教育現場の事情が充分に知らされていない中では、産業界からの要望意見についてどういう検討がされたのかも推測しかできないものの、宮本氏指摘の知識社会への人材の輩出はいまだ始まっていない。 さらに、若者対策のみならず在職者への知識労働者として「自律型キャリア形成」も急務であることを忘れてはならない。まさに、日本を支える勤労者へのキャリア支援政策とキャリア投資が、国家と産業界そして勤労者にとって最重要課題であることに注目しなければならない。
これからの教育にとってその中核は、日本人としての倫理観をあらゆる学科にも取り入れ身につけるまで徹底的に実施するとともに、東アジアの一員としての倫理観も同時に学習することが急務ではないか。 日本商工会議所政策委員会では、「教育のあり方について 『健康な日本』を担う優れた人材の育成を目指して」として提言している。その中で、現在の教育の問題点について7項目を指摘している。 この指摘をどう克服するか、いつまでにするのかなどその方策についても明記されている。 グローバリゼーションのなか知識社会に通用する教育こそが豊かで健康な国づくりが実現することと予感した。
「デモクラシーと平和」
東京大学大学院教授 国際政治学者 藤原帰一氏の講演 から
6月30日、高崎経済大学学術講演会で藤原氏は過去において「デモクラシー間で戦争したものはない」と現代史からの戦争紛争の形について断言した。デモクラシーにとって安全な世界づくりのためのものとして、三つの形態について語った。
折りしも終戦60周年の今年、朝鮮戦争について言及している。 完全に武装解除した日本に対して、朝鮮半島に対する祖国防衛思想に基づき日本からの防衛者として中国共産党軍が半島へ派兵する。 もとより、スターリンが東西冷戦の最前線としての日本の非武装化により朝鮮半島の共産化に好機として金日成への戦争支援を約している大きな背景があった。破竹の勢いで南下を支えた中国共産軍は、最も勇猛な中国朝鮮族を中心とした精鋭軍であった。
そこで、社会主義国家は人民の権利のための平和実現であり、そのために必要な戦争する組織を持つことになる。勿論、国内治安統制維持のためにも有効なものでもある。 国家システムでは、王政(絶対主義)からは二つの形式が誕生している。 共和政と議院内閣制である。軍政から民主化した国家では、民族紛争が多発しさらに悲劇的な紛争へと移行している。インドネシア、旧ユーゴスロビアそしてイラクがあげられる。 戦争しかけた米国は、南北戦争以来「平和主義」を国是のごとく守っていたものの、第1次世界大戦参戦以後はまさに戦争国家として戦線を拡大している。 イラクでは、選挙が実現し徐々に民主化が進んでいるように見ようとすることもできるが、出口がまったくわからない状況には変わっていない。
さて、三つの形態とはまず、国際政治上では現実主義としての「力(武力)による平和」であり、武力装備が平和のバランスを保つということである。つぎには、そもそも条約というものは 「戦争目的の軍事規定」だったことから不戦の目標による条約がある。そして、三番目には平和論としてデモクラシーは「侵略戦争はしない」「戦争を起こす国家は悪」とする絶対平和論があること。米国流の「民主化は外部からできるものか?」は、キッシンジャー氏の引用(1994年)からわたくしなりに考えさせられるものがある。
…アメリカの視点から見れば、戦争をつくるのは民族自決ではなく、その欠如であった。 力の均衡が失われたから戦争が起こるのではなく、力の均衡が戦争をつくるのであった。
大学は地域にどう貢献できるか
3月30日(水)、経団連ホールでは表題のシンポジュウムが開催された。
サブテーマは、「地域活性化のための大学と地域の新たなパートナーシップを考える」である。
主催は公立大学協会。全国には、県立では58大学、市立は15大学、4事務組合立が4大学 と日本の全大学の10.9%を占めている。その設置は、地域からの要請によるものも多く 存在そのものが地域貢献ともいえる。
最近、従来からの「教育」と「研究」に加えて「第3の使命」として国際協力・公開講座・ 産学官連携による直接的貢献を文部科学省が打ち出している。
学生自身が地域へ参画していく形態では、高崎経済大学が印象的である。NPO組織による 継続的な事業としての取り組みが続いている。
産業人にとって魅力的なのは、東京・墨田区と早稲田大学との「包括的事業連携協定」による あらゆる分野での連携展開を進めているところ。すみだ中小企業センターの産学官連携主査の 郡司剛英氏は、「墨田区内に大学がなかったこと。墨田区全体を早稲田キャンパスとすること。」 とスタートから成功までを自信を持って語られている。 「私立大学だから」といってしまえば、もう地域からは見放されていくのは明らかだ。 公立大学協会の今後が興味深い。
・群馬県若者就職支援センター(ジョブカフェぐんま) http://www.wakamono.jp/
・公立大学協会 http://www.kodaikyo.jp/
若者就職支援事業「仕事めっけ群馬」セミナー
3月26日(土)群馬県庁の歴史建造物「昭和庁舎」26号会議室で 群馬県委託事業「若者就職支援事業」の一環としてCD「仕事めっけ群馬」の 製作発表とワークショップ、職業適性検査などが行われた。
主催者は、特定非営利活動法人群馬キャリア・コンサルティング協会(略称GCCA)で 委託事業ははじめてとなる。 参加したのは、高校生や求職者で熱心に新作のCD発表を聞いたあとグループや 個人別に自分の「しごと」について相談をつづけた。
このCDは、仕事探しで最も若者が苦手にしている「職業理解」を できる限り判りやくすビジュアルな表現によって実際のしごとを見て、 仕事をしているものから解説をしていただくというもの。 群馬中小企業同友会の協力により実現した。
ものづくり群馬だけあって製造業には女性もCADなどで登場してくる。 GCCAは、昨年キャリア・コンサルタントを中心に設立された。 月例研究会や企業内の従業員のためのキャリア形成支援をすすめるため 専門分野のエキスパート集団ともいえる。
事業主団体からの要請によりキャリア・ライフ・プラン・プログラム(CLP)を 展開中である。組織活性化の原動力として人的資源強化に集中した戦略として 従業員のキャリア形成が注目されている。 2007年問題とともに減少する労働人口は中小企業にも重大な影響をおよぼす。 その対策は急を要する。