ご挨拶「雇用ルールの明示で効率化を」
会長兼所長 山田 裕史
本年7月、前所長山田悟史急逝のため、会長兼所長に就任しました。 前所長、12年間在任中は、格別のご高配を賜り誠にありがとうございました。 前所長同様、引き続きご指導ご支援の程、謹んでお願い申し上げます。
今年は、高年齢者の定年による再雇用の新制度、有期雇用者の無期雇用転換制度導入、パート雇用者、建設業・運送業等の社会保険加入適用の拡大。
安定政権の下で、労働法・社会保険関連改正などが成立し、人事労務管理の分野に大きな転換期が到来しました。
今まで以上に雇用や福祉といった労働福祉の面が重視されてまいります。 特に女性が働きやすい環境整備が求められてまいります。
こうした動向へ対応は、まず社内の雇用ルールを明示することが求められます。 特に、転換期に向けた就業規則などは、労使のトラブル防止とともに、従業員の皆様へ持続するモティベーションづくりへと発展させることができるよう進めなければなりません。
目的は、こうした取り組みによって、生産性向上に寄与し信頼とともに成長へと繋げていくことです。
皆様とのパートナーとして、少しでもお役に立てることを念じています。
「雇用維持」から「成長産業への転職支援」へ転換
日本も製造業の労働者が減り、成長産業の医療介護、IT(情報技術)などの成長産業は人手不足。 建設、製造業の成熟産業から成長産業へ、スムーズな移動はどうすればいいのだろうか?
ついに、戦略的な雇用政策が登場!
ドイツでは、失業をできるだけ避けて経営難の企業で働く労働者の再就職支援が行われています。 州政府の下に、多くの再就職支援会社が1年間の職業訓練により転職準備を実施。 受講者の半数が再就職を果たしています。
成熟産業に在職中の労働者が転職活動するためには、インセンティブが必要。 特に成長産業にむけての準備には、補助金給付で効果的な移動が期待できます。
成長産業で必要なスキルを習得したときに、生産性の高い労働者として成長産業の企業が積極的に求人。 スキルを習得した労働者と成長産業企業とのマッチング確率が高まれば、在職中に準備し失業しないで再就職が可能となる。
厚生労働省は、成長産業への移動に必要な職業訓練の助成とインセンティブに踏み出します。
成熟企業から労働者を受け入れる側の企業が、新しい仕事に必要な訓練資金の一部を支給。 また、自社の労働者が早く新しい職場で働けるように、離職前に職業訓練を提供する企業にも支給。 人材を送り出す企業と受け入れる企業の両面にわたる支援対策です。
厚生労働省は、成長産業に労働者を円滑に移動させるため「労働移動支援助成金制度」を設けます。 さらに、厚労省は産業競争力会議で、ハローワークの全国の求人情報を民間職業紹介会社に提供。 ハローワーク事業の一部を民間に委託も検討。 また、日本での企業の低開業率は、先進国と比べて企業の新陳代謝が乏しくなり、「衰退産業に労働力が滞留している」と評されています。
労働力人口が減少する中、貴重な人材を成長産業・企業にうまく橋渡しできれば、日本経済の潜在成長率の上昇へと期待が膨らみます。
(写真 上段:スバルBRZ 中段:スバルコンセプトカー 下段:名車スバル360)
日本へ夢の実現をめざす外国人実習生制度の課題
外国人技能実習生制度が始まって20年が経っています。 この制度は、若年労働力の確保が困難な中小企業や農業事業者にとって極めて有効な労働力確保の手段です。
4月、法務省は関係官公庁へ勧告。「管理団体が運営資金を実習生に依存しているため、実習席の適正な監督ができていない。 さらに、この制度を統括する国際研修協力機構(JITCO)も財源を管理団体にゆだねており、団体への指導が不十分。」としています。
3月に広島で起きた中国人実習生が、経営者と女性従業員を殺害したとして逮捕されるという事件が発生。 1か月150時間もの残業をさせていた、都内の食品メーカー。
2011年の厚労省調べでは、労働関係法違反の疑いで事業者を監督指導した事業所は2,800件。 このうち8割以上が残業代の未払い。そのほか危険な作業環境での労働などが目立つ。
すでに、経営者や管理団体への係争中の訴訟も20件超。 管理団体では、入管法に基づく実習生への日本語教育や日本での生活習慣などを指導しなければならない。
以前にも千葉県や熊本県では、受入事業者を殺害する事件が相次いでいる。 不心得な一部の経営者により、期待と夢の実現に向けて来日する実習生たちが失望し、日本自身が信頼を失う。
2009年入管法改正により、実習生への労働法適用となり、それまでの外国人研修・技能実習制度が、 人づくりの面からの開発途上国への技術移転という目的をもち、一定の成果は果たされてきた。
一方で、事実上の低賃金労働者として制度が悪用されるなどと批判も少なくありません。 受入れ企業等のコンプライアンスがこれまで以上に求められます。
課題は、「受入事業者側の責任のみならず、送り出す外国の募集団体や実習生側にも原因がある。」という声に、実績ある労働法や労務管理のプロによる巡回指導の制度化が課題解決に大きな役割を果たすことになります。
(写真 上段:インドネシア実習生受け入れ式 中段:実習生 下段:日本語学習の様子)
ものづくり中心拠点、新社会人へ応援歌
新社会人たちが、慣れない社内で軽快に飛び回っています。 「新社会人のための社会保険の知識」と題して説明会も開催中。
北関東の中でも、群馬県と栃木県で中核的な産業拠点として注目されている「両毛(りょうもう)地域」。 群馬県の太田市、桐生市そして館林市。栃木県の足利市、佐野市を加えて5市6町にわたる地域のことです。
かつての繊維から自動車工業へ変化し、広いすそ野のサプライヤー企業群を形成。 事業所数では、群馬県は太田市がトップ。栃木では足利市。 太田市は、製造品出荷額でもトップ、全国15位を誇る。 スバル車「インプレッサ」が輸出好調で、群馬製作所はフル操業中。 さらに太田市には、日野自動車も生産設備を拡大増産体制を推進中。
アベノミックスの目玉「緊急経済対策」でも、群馬県の産業界は積極的に取り組む。 第1次締切では、47都道府県中で群馬県が最多となりました。 なかでも「ものづくり補助金」は、3分2が助成される目玉事業。(中小企業庁) 第2次締切でも群馬県からは400件超。ものづくりへ人材の確保も急務となっています。
ここで気になる新社会人の「言葉づかい」。
上司へ「ご苦労様です」は×。「お疲れ様でございます」が○。
上司へ「了解しました」は×。「承知しました」が○。
上司へ「○○殿」×。「○○様」○。
さらに、
「○○さんはおりますか」は×。「○○さんはいらっしゃいますか」○。
「どちらにいたしますか」は×。「どちらになさいますか」○。
「お話しても大丈夫ですか」は×。「お話してもよろしいですか」○。
慣れないないうちは、 「恐れ入りますが」「あいにくですが」、 「失礼ですが」「もし差し支えなければ」などを使い丁寧語で話せば好印象となります。 新社会人への応援歌のひとつです。
(写真:就業力育成ネットTCUE会場。相談会の様子@。相談会の様子A。)
超高齢化社会が日本経済を支える新時代へ
労働法改正に伴う企業の対応が迫っています。まさに、元気なシニア層の活用が日本の成長力強化に大きな役割を果たします。改正高年齢者雇用安定法では、全員を定年後65歳まで雇用を継続しなければならないのか?
報道では、「会社の人件費の大幅増加、若年者の採用や人事の刷新に影響があり、さらには子会社人事にも影響する。」弁護士の安西愈氏(写真上)は、「従来の継続雇用制度を導入した対象となる高年齢者の基準は、法律上は必ず希望者全員を定年後65歳まで継続雇用せよと企業に強制するものではない。今回の改正は、従来の再雇用者を限定する基準がなくなったことになる。
しかし、従前からの基準は老齢厚生年金(報酬比例部分)の支給開始年齢に応じて従来どおり適用できる経過措置も定められている。」改正法9条第3項に基づき高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針(告示第560号)は、「心身の故障のため、勤務状況の不良などや就業規則の定める解雇事由や退職事由の該当する場合は、継続雇用しないことができる。」と定めています。
長年培ったノウハウを社内でも関連会社でも活かすことができるシニア。金田全国社会保険労務士連合会長(写真下)は、「65代から69歳の人口に占める就業率は、13年ぶりの水準に急上昇した。新たに加わった65歳が高い労働参加率を維持していることを示唆している。」
高年齢者や女性の就業は、人口減少による労働人口減少ペースを和らげ、同時にシニア層の消費も活発にします。まさに、経営者の高年齢者や女性への雇用対策が日本経済の底上げに繋がっているのです。
我が国は、高齢者の勤労意欲が高く、働く意欲と能力に合わせて企業や社会でも支える側に回ってもらえる。
熟練が必要な仕事には若者を優先し、蓄積した人的資源を活かし若者を導く仕事を高齢者が担うすみ分ける新時代の到来です。
雇用が社会保障を支える政策実現へ期待感
春の労使交渉がスタート。「雇用の確保」から「脱デフレの賃上げ」へ。
「業績が上がれば自動的に上がる、業績連動の企業が多い。」と、経営側は力説中。しかし、業績に応じて賞与・一時金の上乗せには容認的だが、ベアや定期昇給にはかなり厳しい。
その理由には、デフレ脱却の政策が持続的な企業収益に結びつくか、もう少し見極める必要があるとしています。
一方、「アジアの世紀」と謳われ世界経済に占めるアジアのGDPは30%に迫る。2050年までには、中間層が過去20年で3倍に達していることからアジアが占めるGDPは50%になる試算も。
しかし、ここで昨年後半から雇用意欲の低下現象がおよそ半数以上の地域に見られます。
アジア地域も中国、インドと軒並み減速。「需要が旺盛であれば、企業は多少スキルが低い人でも採用して訓練する。だが、人材育成に投資しても元が取れるかどうか解らない状況では、人材をえり好みする傾向が強まる。このためギャップが放置され、広がる悪循環に陥っている。」(マンパワーCEOジェフ・ジョレス会長)
米国企業の経営者は、求める人材が見つからない「スキルギャップ」を、雇用の伸び悩みの一因と挙げています。
日本政策投資銀行地域企画部の大西達也氏(写真)は、「行政・企業そして市民が、歯車のように噛み合うことが成長の原動力。しかし、なかなかそれぞれが噛み合うことが難しい。」
そこで「地域にある資源を見直し、その資源や歯車の組み合わせが必要。資源には、地域にある様々なひと・もの・自然・文化などその豊富さには驚かされる。」と、各地の実例を列挙され、説得力は抜群。
まず、地方から「みんなが働ける」新規事業が起こり、その波及効果から雇用も生まれます。消費税を含む税と社会保障一体改革の成功は、雇用が社会保障を成立させ、非正規社員への教育訓練支援などの社会保障を支えることで好循環を起こします。
さらには、自民党の「ダイバーシティ(多様性)促進法案」(議員立法)により女性の力を大西氏のいう歯車の中に活かしたいところです。「ウーマノミックス」は、女性が日本経済の潜在力といわれ、いよいよ「アベノミックス」への期待感が膨らみます。
日本経済復活は地方と女性に注目
輝かしい新年をお迎えのこととお慶び申し上げます。
本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。
開会
集まった!
新年会受付
さて、ここ太田市は輸送用機械器具産業が好調で一部では人手不足の声もあります。 北関東3県では、昨年1−6月期の工場立地動向調査で前年同期の1.6倍増。 中期的な円高定着や海外生産の拡大さらに震災後の停滞などの懸念から、一転して増加傾向が続くとされました。
特に群馬県は、立地面積では兵庫県につづき全国第2位。 首都圏に近く災害被害が少ないなどから、リスク分散のための進出が増加したとしています。
一方、新政権は2%成長を掲げつぎつぎとデフレ脱却などの政策を打ち出していますが、 「アベノミックスが市場の好感を呼んだが、中小企業の経営者に明日から注文が増えそうだという感覚はない。」と日本商工会議所会頭の岡村正氏。
さらに、「日中関係は、経済と完全に補完関係にある。政治とは区別しないと問題解決とならない。 政府は、外交交渉をもって話し合いを続けて欲しい。」としています。
また、「なでしこ管理職」がなかなか増えない。欧米の30%超と日本の12%の差は埋まりません。 女性登用は、日本経済を押し上げるといわれていますが実現ができるのか?
新政権は、公約に「指導的な立場に就く女性の比率を2020年までに30%にする」としています。 女性登用の義務付けか、それとも努力目標としていくのか。 成熟した日本への厳しい目がことしもつづきます。
(写真:太田商工会議所新年会の500名の経営者)